- 年金って本当に将来受け取れるの?
- 年金制度は続かないから税金払いたくない!
そんな不満を持つアナタのために、
年金制度の行く末と、私たちが年金制度で得をするにはどのくらいの時間がかかるかをまとめました。
日本の公的年金制度
日本の公的年金は20歳以上、60歳未満の全国民に加入義務のある年金制度です。
日本の公的年金の種類
日本の公的年金は、皆さんご存知の通り2種類あります。
- 国民年金
- 厚生年金
今回お話しするのは、基礎年金であり全国民に加入義務のある「国民年金」についてです。
国民年金の方式
国民年金は月々の支払額、支給額が定額で決められている年金制度です。
公的年金のうち「基礎年金」と言われています。
突然ですが、年金の方式には2種類あることを皆さんはご存知でしょうか。
- 積立方式
- 賦課方式
積立方式はその名の通り、若い時代に積み立てていたお金を老後に受け取ることが出来る方式です。
一方で賦課方式は、現役の若い世代が支払うお金を、そのまま高齢者の年金に充てる方式です。
そう、国民年金は「世代間扶養」の考えに基づき賦課方式で運用されています。
これが年金の持続性の問題の根幹に当たります。
令和元年現在、国民年金の徴収額と支給額は
現在の国民年金の額は定額で以下の通りです。
- 徴収額 :16,410円
- 受給額(平均):55,615円
何故年金の維持が難しいといわれているのか
国民年金は上記の賦課方式に基づき25歳以上~64歳未満の「生産年齢人口」が65歳以上の「高齢者」を年金を払っています。
年金の維持が難しいとされるのは将来的に生産年齢人口が減少し、高齢者が増加するとみられているからです。
総務省がとあるデータを出しています。
●2019年
生産年齢人口 7,500万人 高齢者 3,500万人
●2050年
生産年齢人口 4,000万人 高齢者 4,700万人
各月1日現在の日本の人口について、最新の推計結果を掲載しています。…
つまり現在は7,500万人で3,500万人分の年金を賄っているのに対し、
2050年には4,000万人で4,700万人分の年金を賄わなければならなくなるのです。
どうすれば年金問題は解決するのか
①別の財源を確保する
生産年齢人口からの保険料も、高齢者の受給額も現状維持です。
現在の年金の財源は生産年齢人口から徴収した保険料が50%を占めています。
将来減少するこの保険料を、別の財源で賄います。
今でも消費税等の国庫支出で足りない分を補っており、その枠を拡大する必要があります。
②受給額ダウン
高齢者の受給額を減らすことで国庫支出も、生産年齢人口の負担も現状維持のパターンです。
上記のデータの通り、2050年には日本の人口の過半数を高齢者が占めるので、
票が欲しい政治家は高齢者に不利になる改革をやるとはあまり思えません。
③受給年齢の引き上げ
これも、高齢者が割を食う制度改正になります。
④生産年齢人口からの徴収額を引き上げる
個人的に最も有力な説です。
何故なら国民年金が制度化した昭和36年から令和元年まで、徴収額は上がり続けているからです。
昭和36年の徴収額は100円、令和が年の徴収額は16,410円で約164倍になっています。
●物価の違いを考慮すると
もちろん昭和36年の100円と令和元年の100円では価値そのものが違います。
そこで日銀調査の物価指数を用いて、昔と今の100円の価値の違いを検証しました。
消費者物価指数:4.2倍(消費者が物を買う時の物価を示す指数)
日銀調べでは、高く見積もっても昭和36年の100円は、令和元年の420円ですね。
ん、思ったより安いな。。。と個人的に思ったので今度は大卒の初任給で考えてみました。
令和元年の大卒初任給:206,700円
資産運用に新たな基準を・・・。…
こう考えると物価は約13倍になっていることが分かります。どちらかというとこっちが納得の数字です。
さて、昭和36年の100円が令和元年の何円になるかの結論としては、100×13で1,300円となります。
上記の物価の違いも考慮して年金の徴収額が、昭和36年→令和元年でどれほど増えたかというと
16,410 ÷ (100 × 13) = 12.6より、約13倍に増えていることが分かります。
何歳まで生きたら年金の元が取れるのか
では、本題です。それぞれのパターンで何歳まで生きれば元が取れるのかを紹介していきます。
①別の財源を確保するパターン
高齢者の年金受給額:55,615円/月
生産年齢人口の保険料:16,410円/月
◆生産年齢人口の総支出額
月々の徴収額は16410円ですので64歳までに支払う総額は
16,410円 × 12ヵ月 × 40年 = 7,876,800円
◆年金で元を取るには何歳まで生きればいいか
月の受給額の平均は55,615円ですので、支払額を回収するまでにかかる時間は
7,876,800円 ÷ 55,615円 = 142ヵ月(11年と10ヵ月)
受給開始年齢は65歳なので、年金の元をとるには76歳と10ヵ月生きる必要があります。
現在の平均年齢は84,175歳(女87.26歳、男81.09歳)なので、50%以上の人が年金でトクをできる計算になります。
で、これが年金制度が現状維持で進んだパターンです。
こうもいかないのが現状だと、これまでの話で皆さんも感じていませんか?
され、これからはもっと現実的なシミュレーションになります。
何も考えず年金を払っている人は心の準備をしてくださいね。
②年金受給額がDownするパターン
高齢者の年金受給額:xxx円/月
生産年齢人口の保険料:16,410円/月
先ほどのデータをおさらいしてみましょう。
生産年齢人口
7,500万人 → 4,000万人(47%Down)
年金の財源は半分が生産年齢人口からの徴収なので、2050年には年金の財源が約23%減ることになります。
◆高齢者の年金受給額
現在の高齢者一人当たりの年金受給額平均は55,615円、高齢者は3,500万人なので、2019年現在年金に必要な財源は
55,615円 × 3,500万人 = 1,946,525,000,000円
となり、2050年にはこの財源が23%減額となるため、2050年の年金の財源は
1,946,525,000,000円 × 0.77 = 1,498,824,250,000円
となります。高齢者は4700万人なので、高齢者一人当たりの年金受給額は
1,498,824,250,000円 ÷ 4,700万人 = 31,890円
となります。
2019年→2050年で高齢者一人当たりの受給額は55,615円から31,890円に減少します。
★年金で元を取るには何歳まで生きればいいか
年金の総支払額は7,876,800円で、ひと月の受給額は31,890円なので、元を取るためには
7,876,800円 ÷ 31,890円 = 247ヵ月(20年と7ヵ月)
つまり、85歳と7ヵ月生きれば年金の元を取ることが出来ます。
現在の平均年齢は84,175歳(女87.26歳、男81.09歳)なので、過半数の人が年金で損をする計算になります。
細かくすると、女性は得できる可能性の方が高いですが、男は平均よりたったの4年長く生きればいいだけです!!(涙目)
③徴収額を引き上げる
この場合は、受給額はそのままで高齢者が割を食うことはなくなり、①と同様に70歳と1ヵ月生きれば年金の元を取ることが出来ます。
では視点を変えて、2050年の生産年齢人口の負担を計算してみましょう。
受給額はひと月あたり55615円で、高齢者人口が4,700万人なので必要な財源は
55,615円 × 4,700万人 = 2,613,905,000,000円
このうち半分は国庫支出で、残りの半分を4,000万人の生産年齢人口から徴収するので、
一人当たりの徴収額は
(2,613,905,000,000円 ÷ 2 ) ÷ 4,000万人 = 32,674円(2019年から約2倍増)
で32,674円となります。
最後に
これまで見ていただいてわかる通り、この計算はいたってシンプルで詳細を考慮していない計算ではあります。
が、しかし、漠然とした年金への不安が少し明確になったのではないかと思います。
そして、重要なことは人口推移がこのまま予想進んだ場合、年金制度の改正は何があっても必要ということです。
その際に損を被るのは高齢者か、若者か、あるいはその両方か、どんな形にせよ、今と同じような利益を年金から得ることは不可能ではないでしょうか。
最後に、くれぐれも勘違いしないでほしいのは、これは決して年金制度のネガキャンをしているわけでも、年金未払いを進めているわけでもないことを念押しして伝えさせてもらいたいです。
ただ、国に頼るだけではなく、自分の力で資産形成をすることに目を向けた方がいいという気付きを与えられたのであれば幸いです。
今回は以上になります。ありがとうございました。